ディモルフォセカの涙

「何を、私は何も知らないわよ!

 ただカナタさんの環境に
 病み上がりの私の心が
 変に反応しただけのことよ

 お母様を亡くされてカナタさん
 かわいそう」


 かわいそう……そんな言葉で片づけないでほしいと思う私がいた。 
 
 何も知らない私や実花さんに、彼方の悲しみの何が分かるのだろう?彼方の苦しみの何が……

 他人に囲まれて遠慮しながら生きる彼方を一番近くで見て来た私には、とても言えない。

 でも、どうして実花さんは彼方の話を聞きたがったのだろう?


「ミカさん、ウサギの話だけど
 非売品の……」

「ああ、きっとお母様
 アークトティスの熱狂的な
 ファンだったのね」


 熱狂的なファンだと言われればそれまでで、私には何も分からず、真相は闇の中に。


「あ~、話したら疲れちゃった
 私、もう少し眠るね」

「うん」


 布団を深く被る実花さん、眠りの邪魔をしてはいけないと私はベッドから離れた。


『わたしとカナタは血が繋がっていないの』

『おまえ、うるさいよ

 俺の前から消えてよ』

『ユウ』

『ユウ』

『ユウ』


「うるさい」


 深く潜る布団の中で、両耳を塞ぎ、涙するあなたをわたしは知らない。

 行き場を無くしたあなたの愛は、どこへ向かう。