ディモルフォセカの涙

「やっと、二人きりだね

 ユウ、まだ飲むでしょう

 おトイレのついでにお代わり頼んでくる」

「うん、ありがとう」


 しばらく経っても実花さんは部屋に戻っては来なくて、心配になった私が向かった先に、カウンター越しにマスターと話す実花さんの声が聞こえて来た。


「ほんと、自分がやるって決めたくせに
 ワークショップ成功したかどうかぐらい
 聞いてこいっつーの、くそ親父!

 ほんと、生きてるんだか死んでるんだか」

「ヤツなら大丈夫、心配ないさ」

「心配なんて私はしてないよ

 あ~、囚われていたくない

 ギター、貸して」

「はいはい、どうぞ

 おっと、ここはやめてね
 お部屋でどうぞ
 
 お連れさん連れてってくれる」


 マスターが私が迎えに来たことを実花さんに知らせると、実花さんはギターを手に私の元に飛んで来た。


「ユウ、私の歌
 
 一曲、聞きたい?」

「うん、聞きたい」


 実花さんが持っているギターケース。そこに、見覚えのあるマスコットがぶら下がっている。


「ミカさんのギターなの?」

「ううん、オウのギター」

「そのウサギのマスコットって
 売ってるのかな?」