ディモルフォセカの涙

 だけど、実花さんのことをひどく言う、それ以外はとても優しい人のように思える。

 幼稚園の先生に連れられて来た園児は年長さんで、元気がいっぱい有り余っている様子。

 太田さんに次から次へと抱きついていき、彼はそれを嫌がることなく一人一人の頭を優しく撫でてあげている。


「みんな、鈴、持って来たんだね」

「わー、オウせんせいだぁ

 ハーモニカもあるよ」

「すごいじゃん」


 あんな風に園児達に微笑んで接する彼のことを、私はとても悪い人には思えない。

 私は、太田さんから頂いた名刺をポケットに大切に仕舞った。


「それでは、子供たちは集まって
 ワークショップ恒例の
 みんなで作曲しましょう

 まずは、白ウサギさんグループと
 黒ウサギさんグループに別れましょう」


 実花さんはこのために、大きな白ウサギの絵と黒ウサギの絵をホワイトボードに張り付けていたのね。

『今年はどんな曲ができるかなぁ、楽しみ』----ついさっき、実花さんが話していたけど。


「作曲?

 そんなこと、できるんですか!」


 作曲----限られた時間の中で、しかも今日初めて楽器に触れる子もいる。うまく音が出せない子も……。

 実花さんの言葉に驚く私に、隣にいた太田さんは説明してくれる。