ディモルフォセカの涙

 彼方と到着場所である焼き鳥屋さんまで続く道を歩く。車道にはまだ何台もの車が行き交っているが歩道には人はまばら。その時、私の視界から彼方の姿が消えた。

 その場に、今度は私に背を向けてしゃがみ込む彼方。


「カナタ、何してるの?」

「ほらっ、負ぶってやる」

「いいよ、恥ずかしい

 あっ、あそこ靴売ってそうだよ」


 私が指差した先には、店外にセールワゴンを出した生活雑貨を扱うお店がある。遠く、目を凝らして彼方は言う。


「靴って言うより、あれはスリッパだろ」

「いいよ、この際何でも

 (お店)閉まりそうだよ、急ごう」


 立ち寄ったお店で私は外履き用スリッパ、サンダルを彼方に買ってもらう。一応、冬使用のファーが付いたモコモコサンダルだけどソールは何故か下駄仕様で、歩く度カランカランと音がする。


「うるさい」

「いい音じゃない

 カナタ、覚えてる?

 親戚みんなで集まって行った花火大会」

「ああ」

「いとこみんなでおばあちゃんお手製の
 浴衣着てたね」

「ああ」

「楽しかったね」


 彼方は私の言葉に頷きながらも、どこか腑に落ちない感じで過去を思い出し何かを考えている様だった。


「カナタ

 ……

 カナタ!あそこ

 みんな、もう待ってるよ」

「あっ、ああ」

「さっきから、ぼーっと黙って
 どうしたの?」

「いやっ」