それなりに恋愛はして来たけれど、心の底から欲しいと望んだ人は、貴方。

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 ある日のライブハウス、トリを務めるバンド……私は今日も、『貴方に会えないままに終わるんだ』とそう意気消沈していた。

 ざわつく会場内、私は顔を上げてステージを見つめた。

 ステージの中央に立つ人……金色に輝く髪も、ギターを無我夢中で弾く姿もどこにもない。

 真っ黒な髪に痩せこけた頬、女の私よりも細い腕、手首、そんな貴方が私の前にもう一度現れた。


『ディモルフォセカ……』

『ディモルフォセカ!

 うそっ、嘘でしょう!』

『……活動再開します

 俺の歌でよければ、いつでもどうぞ』


『やっと、会えた』----私の視界に映る貴方の姿は、潤んでいる。久しぶりのその姿、この目に焼きつけたい!それなのに、私の涙は止まらない。

 私はこの時を、この場所でずっと待ち続けていた。貴方ともう一度出会える、この奇跡を。

 ある日を境に、後追いで入学した音楽学校でも、このライブハウスでも、貴方に会うことは叶わなくなった。