ディモルフォセカの涙

「ごめん、起こしちゃった?」

「ううん、ユウ、おはよう」

「おはよう

 お水飲むけど、ミカも飲む?」

「うん、おねがい」


 キッチンに向かった私は躊躇することなく、実花さんの家の冷蔵庫を開けペットボトルのお水を二本手に取った。

 ベッドに横たわったままの実花さんに降り注ぐ日の光----実花さんの頬にペットボトルをそっと当てると、「冷たい」と言って彼女は体を起こした。そして、手を伸ばしカーテンを開ける。


「今日もいい天気」


 こうしてベッドに並んで座るのはいつものことで、普段と何ひとつ変わらない光景。

 私の隣に実花さんが居る、それはもう当たり前のこと。


「例のワークショップの準備の方はどう?」

「ああ、それなら
 毎年のことだから順調だよ
 
 リサイタルの催し物をもう少しつめて
 後は、クリスマスも近いから園児に何か
 プレゼントを考えているところ」


 実花さんの話では、音楽教室は毎年この時期になるとリサイタルも兼ねたワークショップを開催して、教室を解放し、音楽に興味のある人はもちろん、近くの幼稚園の児童を招いて音楽に触れてもらう機会を自主的に作っていた。