ねえ、彼方----あなたは、わたしを助けてくれない?


 開かれた扉の向こう側に広がる景色、見慣れた街並み。だけど、私はそれをつい最近まで知らずに過ごしていた。

 そう、ここは実花さんの住む部屋の前、私はここから昇る朝日・太陽をもう幾つ見ただろう?

 時は、師走・12月----以前、購入したセーターの上にジャケットを羽織る、私。


「クシュン」

「ユウ、風邪引いちゃった?」

「ううん、大丈夫」

「本当?気をつけないとダメだよ
 
 昨日寒かったんじゃない、お布団……」


 私のことを心配してくれる実花さんの傍で、私はある日のことを思い出していた。

 彼方と並んで歩く通学路。空を見上げながら、私は言うの。


『´フウァー´

 カナタ、いい天気だね
 学校なんて行きたく、なっ

 ´クション´よね?』

『ユウ

 あくび(欠伸)かクシャミ
 どっちかにしなよ』

『あくびぃ、してないよ』

『うそつけ』


 じろっと私へと向けられた彼方の視線に、私は何故かトキメクのだった。


「ふふっ」

「ユウ、どうかした?」

「ううん、ミカ
 
 ミカってばそう
 お母さんみたいだなぁと思って」