先に口を開いたのは、サナだった。アイルの知り合いだということは、検討がついたからか「どちら様でしょうか?」などと口走る。当然、お客さんに対して言うセリフではない。まあ、来訪者であるミクが何者か名乗らないのもいけないわけだが、普段のサナから発せられる言動とは思えない。オレはその様子をベッドで寝っ転がりながら見ていた。ミクの視界からはオレの姿は見えないようだった。

どちら様と言われたミクはわなわなと体を震わしている。付き合いの長さならミクの方が圧倒的に長い。ミクからしたら、そのセリフは自分が言いたい思いであっただろう。訳の分からない小娘に自分のことを訳の分からない女扱いされたのだ、怒るのも無理はない。