胸の中で出た答えに自分自身も納得ができた頃、ちょうどイベントは終了した。
帰路につく人や、機材の撤収が始まる中、私たちもそろそろ帰ろうとしていた、その時。
「あれ、お前たちも来てたのか」
突然かけられた声に、ドキッとした。
馳くんたちと振り向くと、そこにはこちらに向かい歩いてくる久我さんがいる。私たちに気づいて声をかけてくれたようだ。
そんな久我さんに、馳くんを始め他の部署の人も興奮気味に話をする。
「久我さん!イベントすごかったですね、感動しました」
「そうか。ならよかった」
べた褒めされてもその顔が緩むことはなく、やはり久我さんは冷静だ。
すると、ふとこちらを見た彼としっかりと目が合う。
会いたいって思ってた……はずなのに。
いざ会うと逃げ腰になってしまって、私は顔をそむける。
「わ、私お先に失礼します!」
そしてそれだけを言うと、バタバタとその場を駆け出した。
ああもう、どうして。この前も今も、すぐ逃げ出しちゃうんだろう。
これまで散々、勇気を出して本音を伝えてきた。
だけど、気づいてしまった。
自分が『好き』と言うよりも、彼に彼女の名前を呼ばれる方が怖い。
その胸に、自分が入る隙間などないと知るのが怖い。
「おい、霧崎!」
ところが、早足でだいぶ歩いてきたところで、その声とともに腕を掴まれた。
驚き足を止めると、走って追いかけてきたらしい久我さんがいた。



