「あっ、清人!ごめん、私が霧崎さんにぶつかっちゃって……」
「霧崎と……?霧崎、顔ぶつけたのか?大丈夫か」
小宮山さんから事情を聞いた久我さんは、こちらへ近づき、私の頬を両手で掴み持ち上げる。
いつもなら彼に触れられて嬉しいはずなのに、今はいやだ。
目を見て、見透かされたくない。
情けない自分のこと。
「大丈夫ですから!!」
その思いは彼への拒絶になって表れて、私は大きな声とともにその体を押しのけた。
そして足元にちらばった紙を急いで集めると、その場をあとにした。
小宮山さんを目の前にしたら、いかに自分がちっぽけで惨めなものか思い知った。
苦しい。情けない、恥ずかしい。
代わりでもいい。それでもいつか私のことを見てもらえるかもしれないって、微かな希望もあった。
だけどきっと無理だ。
彼と対等な位置に立つ彼女は眩しすぎて、私なんかでは届かない。
わかっているようで、わかっていなかった自分が、余計に情けない。



