「弱いんですねぇ、脇腹」
「お前という奴は……!」
久我さんは鋭い目つきでこちらを睨む。
けれどあははと笑う私の顔に、怒りを呆れに変えて、その場にしゃがみ散らばった資料を集めた。
それを見て、私も隣にしゃがんで手伝う。
「そういえばさっき、中田が霧崎のこと探してたぞ。今夜の会費、先に集めたいって」
「そうなんですか?じゃああとで持って行きます」
散らばったクリアファイルから抜け出てしまった用紙を集めながら、彼の言葉に思い出す。
そういえば今夜はうちの部署とイベント運営部、合同の飲み会があるんだった。
先月、両部署の合同チームで取り組んだ大きなプロジェクトが終わったのでその打ち上げだ。
まぁ、そのプロジェクトの一番の功労者も久我さんだ。
朝から晩まで、自分の仕事に加えてプロジェクトの方もやって、と頑張っていたもんなぁ。
「久我さんも参加しますよね?なんてたって功労者ですし!」
「その言い方やめろって」
集めた資料を手渡しながら言う私に、久我さんはそれを受け取ると困ったように笑う。
「頑張ったのは俺だけじゃなくて霧崎含め全員だろ」
そしてそう言うと、まるで子供を褒めるように私の頭を軽くポンッと叩いてその場を歩き出した。
私含め、全員……。
彼が一番苦労していたことは誰の目から見ても明らかなのに。それでいて気取らず、ああいうことをサラッと言えてしまうからかっこいいんだよね。
また惚れ直してしまう、と遠くなる後ろ姿を見つめた。
するとそこに、隣の会議室から出てきた女性がコツコツとヒールを鳴らしながら久我さんを追いかける。



