どうしよう、誰かに聞こうにも誰もいないし……隣の部署に誰かいるかな。

パニックになりながらも手元のマウスをひたすらカチカチとし続ける。

すると突然部屋のドアが開けられた。



「あれ、霧崎。まだいたのか」



そこに姿を現したのは、ファイルを数冊手にした久我さんだ。

彼と目があった途端、私は泣きつくように声をあげた。



「久我さぁーん!パソコンがー!」



パニックになった私と、作りかけのデータという光景から、久我さんは状況を察したようにこちらへ歩いてきた。



「うるさい、騒ぐな。パソコンがフリーズでもしたか?」

「そうなんです。まだデータ保存してないのにー!」



久我さんは私の声にうるさそうに顔をしかめながらも、背後に立ち画面を覗き込む。

突然近くその横顔に、心臓がドキリと跳ねた。



「本当だ、固まってるな」



そう言いながら、パソコンの状況を確認するように、私の手に手を重ねる形でマウスをカチカチとクリックする。

不意打ちで触れた大きな手は、軽く私の手を包んでしまう。



骨っぽくて、少し冷たい手。

意識すると、背中にあたる彼の胸や、耳にかかる息にもときめいてしまって、全身の熱があがるのを感じた。



「は、鼻血出そう……」

「……声に出てるぞ」

「え!?」



思わず声に出てしまった!

呆れたように彼に突っ込まれ、余計恥ずかしくなってしまう。