つまり、公言するなってことですね……。

まぁそうだよね。付き合ったなんて話が下手に広まって、お互い仕事がやりづらくなるのも困る。



……それに、久我さんは小宮山さんに知られたくないよね。

不本意でも他の人と付き合ってるなんてことを、好きな人に知られるなんてきっといやだろう。

彼の中に彼女の存在を感じるたび、こうしてまた胸がチクリと痛む。



沈みそうになる心を奮い立たせるように、私は廊下でひとり、両手で自分の頬を叩いた。



浮いたり沈んだりしてる場合じゃない。仕事中!集中しなきゃ!

恋に浮かれてばかりはいられない。



企画を練り、クライアントと打ち合わせをして、電話で営業もして……。一日中、バタバタと仕事に追われ駆け回る。



「はー……疲れた」



そしてひと息つく頃には、時刻はすでに21時を過ぎていた。

ずっと向き合っていたパソコンの画面から顔を上げると、いつの間にか周りに人はおらず、部屋には私ひとりだった。



仕事に集中しすぎてまた残業してしまった……。

私自身楽しんでいるし、無理のない範囲で働いてるけど、あんまり残業すると管理部に怒られちゃうんだよね。



よし、データ保存して今日は帰ろう。

そう思い、作りかけのデータを残しておくべく保存マークをクリックする。

ところが、カーソルは動くことなく固まってしまった。



「あれ、うそ!固まった!?」



このデータ作るの時間かかったのに!

費やした時間と努力が消えてしまうのか、と血の気がサーッと引く。けれど何度マウスをいじろうと、画面は固まったままだ。