冷徹部長の溺愛の餌食になりました




彼が断れば、軽蔑されてしまうかもしれない。

彼が頷いても、私はあの人以上の存在にはなれない。



このひと言を言ったら、きっと終わる。



そうわかっていても、ほんの少しの希望ですらもすがりたい。

どんな存在でもいいから彼のそばにいたいと思ってしまう。



「いくら見つめても振り向かない彼女とは違う。私は……あなただけを見てます」



今のあなたに、この心がどれほど届くかなんてわからない。

だけど、本当だよ。



久我さんのことが、好き。



その一心でゆっくりと顔を上げると、久我さんはなにも言わずまっすぐに私を見つめていた。



この目をのぞきこむ、熱い眼差し。

そんなふうに見つめられたら、あなたが私を見てくれているんじゃないかって錯覚を起こしてしまいそうになる。



彼はそのまま言葉なく距離を詰めると、そっと唇を重ねた。

その唇が、誰を想ってキスをしているのか。想像するだけでまた胸が痛い。

だけどそれでも、いっときでも彼の腕の中で溺れられるのならすがりたい。



あの人の代わりで、いい。



言い聞かせるように、胸の中で繰り返しながれそのキスに応える。

そして全身を愛撫するその熱い指先に身を委ねた。