「お水持ってきますね。すみませんが、勝手にキッチン入らせてもらいます」
そう言って一度寝室を出ようとした。けれど、久我さんはそんな私の腕をそっと掴んだ。
突然手首に触れるその長い指に、胸がドキリと音を立てる。
「く、久我さん?どうかしました?」
そのまま腕を引っ張られ、私は前のめりに久我さんの上へと倒れこんだ。
「わっ、いきなりなに……」
顔を上げると、目の前には私の下にいる久我さんの顔がある。
密着する体と、初めての至近距離に状況がわからずただ混乱してしまう。
「久我さん……?」
バクバクと激しい心臓の音が聞こえてしまいそうだ。
全身が熱くて、ドキドキが止まらなくて、おかしくなりそう。
そんな私の動揺に気づいているのかいないのか、久我さんは少し眠そうな切れ長の目で私をじっと見つめた。
「……熱いな、体」
「だ、だって久我さんが!」
言葉を遮るように、久我さんは右手でそっと私の頬を撫でる。
かわいがるような、優しい指先がくすぐったくて、つい「んっ」と声が漏れた。
それを聞いて、彼はおかしそうにふっと小さく笑うと、私の額にキスをひとつ落とす。
肌に触れる唇の柔らかさを感じて、いっそうときめきが増す。
ほどよく筋肉がついたその両腕は、気付けば私の体をそっと抱きしめていた。



