冷徹部長の溺愛の餌食になりました




「何階ですか?」

「13階……135号室」



久我さんの言う通り13階で降りると、奥の方にある一三五号室へ向かう。

鍵を開けドアを開けると、薄暗い部屋の中ひとり暮らしにしては充分な広さのある玄関からは廊下が伸びていた。



暗い……そして広そう。電気どこだろう。

いや、まずは久我さんを置くのが先だ。



自分より三十センチ近く高い身長と、しっかりと筋肉のついた体をした彼を必死に支えてきたけれど、正直もう腕が限界だ。

まず久我さんを寝かしつけて、それから水や着替えを用意してあげよう。



「寝室直行でいいですよね。寝室どこですか?」

「そこ……」



彼が力なく指差すのは、廊下右手にある茶色いドア。

それをそっと開けると、そこには寝室が広がっていた。



グレーと白の配色のシックな壁を、大きな窓からのぞく月明かりが照らしている。

真ん中に置かれた大きなダブルベッドは、綺麗にシーツが敷かれており、彼の几帳面さをうかがわせた。



久我さんの、寝室……。

鼻からふわりと入り込む彼の香りに、今になって緊張で身がこわばる。



冷静に考えれば、私、今好きな人の家にふたりきりなんだよね……!

意識したら途端にドキドキしてきた。どうしよう。



久我さんの家や香りをもっと堪能したい、けどとりあえず、まずは彼をベッドに寝かせて……。



そう思い久我さんの体をベッドにおろす。

ゴロンと横になる久我さんはもうネクタイも外し、シャツのボタンも鎖骨の下まで開けて、いつものきっちりとした姿とは真逆だ。