「いえ!ここは直属の部下として私が責任を持って送ります!」
女性たちにそう強く言い切って、私は久我さんの腕を強引に引っ張り歩き出す。
彼女たちの「えー」という不満げな声を聞きながらも聞こえないフリをして、すぐタクシーを捕まえると、彼を押し込み自分も乗った。
「久我さん、住所言えますか?」
「家……家は、北海道札幌市……」
「って実家じゃないです!」
北海道出身なのは知ってたけど!
すかさずツッコミを入れる私に、前の運転手は面倒臭そうに顔をしかめた。
久我さんからなんとか住所を聞き出して、車を出してもらう。
そして二十分ほどでやってきたのは、恵比寿駅からほど近い住宅街だった。
彼の体を支えながらタクシーを降りると、ドアの閉まる音が閑静な住宅街にひとつ響いた。
周囲は大きな戸建てやマンションばっかり……高級住宅街だ。
辺りを見渡してから、目の前のマンションを見上げる。
黒い外壁がシャープな印象のその建物は、十数階はあるだろう。私が住んでいる二階建ての小さなアパートとは大違いだ。
彼から番号を聞き出しオートロックを解除して中へ入る。
グレーと白を基調とした重厚感のある雰囲気のエントランスは、吹き抜けとなっており、開放感も漂わせる。
その雰囲気に圧倒されながらも、私は彼の体を支えながらエレベーターに乗った。



