冷徹部長の溺愛の餌食になりました




「いやー、霧崎さんはうちの部署の女性たちと違って笑顔がかわいらしくていいなぁ。よーし、今夜は飲むぞ!さ、霧崎さんも!」

「えっ!いえ、でも私そんなに強くなくて……」

「またまたぁ!とか言いつつ飲めるんだろう!」



断っているにもかかわらず、目の前には日本酒が注がれたグラスが置かれる。



に、逃げたいけど逃げられない……。

他の部署とはいえ、一応上司相手だ。手を払い逃げることもお酒を断ることもできない。

仕方ない、ここは覚悟を決めて飲むしかないか。



諦めてグラスを手に取ろうとした、その時。横から伸びてきた手がそれを奪った。



「え?」



誰?と不思議に思い振り向くと、そこにいたのは久我さんだった。



離れた席にいたはずの彼は、グラスを手にしたかと思えばそのまま口をつけ、ゴクゴクと中身を飲み干す。

驚き唖然として見るみんなの中、空になったグラスをドン、とテーブルに置いた。



「こんな小娘じゃ飲み相手にならないでしょう。俺がお相手しますよ」

「えっ、久我さん……?」

「ってわけで席交代。霧崎は向こうで女子同士仲良くしてろ」



突然久我さんが割り込んでくるとは思わなかったのだろう。唖然とする上司から私を離させると、久我さんは自分がいた席へ私を向かわせる。

そして空いた私の席に腰を下ろした。