今夜、キミを独り占め。




「来ちゃった…」


そこまでは良かったものの、保健室のドアの前から動けなくなる私。

ここから勇気を出さなければならないというのに、臆病者の手が動くことはなかった。


何度も意味のない深呼吸を繰り返し、落ち着くことのない胸を右手で抑える。

本当にひとりだと何もできない。
誰かがそばにいると、簡単に自分を偽れるというのに。


今日も勇気が出ないまま、昨日のことをなかったことにしてしまうのだろうか。

そう思っていると、突然背後から気配を感じて。


「やっぱり笹野さんだ。
今日も保健室にきて、どうしたの?」

「……っ!?」


振り向く間も無く聞こえた声に、思わず心臓が止まるかと思ってしまった。


まだ心臓がばくばくとうるさく鳴る中、振り向けばそこには優しく笑う光原先輩の姿があった。