『華蓮ちゃん』と私を呼んで袖を引っ張ってくる真由は、心配そうな表情をしている。
反応しないといけないのに、全身が石のように固まって動けなくなってしまった。
昨日のことに対して謝りたい、お礼を言いたいと思っていたけれど。
いざ彼を目の前にすると、どうすればいいのかわからなくなってしまう。
放心状態になっていると、真由が無理矢理私の袖を引っ張ってきて。
自然と足が動き、なんとか一年の靴箱に向かった。
「華蓮ちゃん、本当に大丈夫?
保健室に行かなくて…」
「ご、ごめんね…体は元気なんだけど精神面が」
「精神面?」
「や、何でもない…行こう!」
また真由が何かを察するのまずいと思った私は、慌てて靴箱を後にしたけれど。
それが間違った選択だったようで───
「……っ」
「あれ、君は…」
廊下に出た時、同じタイミングで廊下に出てきた光原先輩と目が合ってしまったのである。
最悪だ。



