「じゃあ行こうか」
ようやく確認できた光原先輩の表情は相変わらず優しく、私の手をそっと握った。
さりげなく恋人繋ぎをしてくる彼は、付き合っていることを主張したいのだろうか。
「あの、光原先輩…」
まだ名前しか呼んでいないというのに、なぜか手をぎゅっときつく握られてしまう。
明らかに様子が変だ。
「ねぇ、君の好きなタイプは?」
「えっ…」
夜道を歩きながら、隣に並ぶ光原先輩からの突然の質問に戸惑ってしまう。
彼の心が読めないのである。
「過去に恋した相手でもいいや」
「そんな人いません」
「ひとりも?学校の先生とかでも」
「いきなりどうしたんですか」
いつになく真剣な表情である光原先輩に戸惑う私。
優しい笑顔を浮かべていないのだから尚更。



