「笹野さん?
どうしたの、いきなり笑って」
「すみません、光原先輩の表情が新鮮だなって」
今は少し嬉しい。
私の前で少しずつ“素顔”を見せてくれているんだと思ったから。
「それが嬉しいの?」
「はい、嬉しいです」
「……おかしな人だね」
特に反応を示さず、なぜか私に背中を向けてしまう光原先輩。
「えっ、あの…光原先輩?」
「俺の負けだよ、こっち見ないで」
「……?」
どうしてか私に背中を向けてしまった彼は、降りる駅に着くまでの間決して私を見ることはなかった。
そのため私が光原先輩の表情を確認できたのは電車を降りてからで。
私を家まで送ってくれるらしく、降りた駅は私の最寄駅だった。



