こんなことして何が楽しいのだ。

すでに電車の中にいる人たちから視線を感じるというのに。


「普通はね、こんなことされたら照れるんだよ」
「はい?」

「君はまったく照れないね。
頬を赤らめて俯いて欲しいな」


撫でられてもくすぐったいだけだ。
照れる要素など、どこにある。


「ご期待に添えなくてすみません」
「ああ、そんなこと言わないで。虚しくなるから」


少し不満気な表情をしながら今度は頭を撫でてくる。

じっと光原先輩を見つめ、ふとあることに気がついた。


今の光原先輩は笑っていない、と。
不機嫌にも捉えられるその表情は見慣れないもので。


「……ふふっ」

なんだか嬉しくなった私は、つい笑みが溢れてしまった。