ただ電車の中は少なからず人が多くて。
ふたり向かい合って乗る形になってしまった。

というか、隣に並んでいたはずの光原先輩が向かい合う形になったとも思える。


「もっと混めばいいのにね」
「……いきなり何を言ってるんですか」

「どさくさに紛れて色々できるなって」
「訴えますよ」


光原先輩のことだ、体を触ってくる気だろうと思った。


「厳しいなぁ、もう今は恋人同士なのに」
「限度があります」

「んー、悲しいなぁ」


そう言って軽く頬をつねってくる光原先輩。
まったく痛みはないけれどじっと睨むことにする。


「どうして睨むの?
怖い顔しないで」

睨む理由をわかっているくせに。
今度は私の頬を撫でてきて、離す気はないようだ。