「本当だ、一回じゃ物足りなさそうな顔してる」
「…………」
「あっ、逃げた」
このタガが外れてしまえば終わりな気がして、ぎゅっと光原先輩に抱きついた。
こうなれば彼も諦めてくれる。
「もー、キスするたびに抱きつくのはそれが理由だったんだね。やられたよ」
なんて言いながらも、無理に引き剥がすことはせずに頭を撫でられる。
「残りの試合も頑張ってね。
今日はどうする?俺の家に来る?」
「……行きます」
最近、お母さんといるよりも光原先輩といたほうが本当の自分になれて楽だと思うようになっていた。
それでいて、心地いい。
好きに甘えられる人。
最近は放課後そのまま光原先輩の家に行き、お母さんが帰ってくるまでには家に帰るということを繰り返している。
とはいえ毎日ではなく、多くて週に二回だ。



