「電車、一本乗り遅れたんだ」
「何それかわいい!」
「郁くんでも遅れる時あるんだね」
柔らかな声音は、まるで聞く人を落ち着かせるようだ。
その相手とは同級生ではなく、ひとつ年上の先輩で。
それも一年の間でも有名な先輩だ。
名前は光原 郁先輩。
今も女子から話しかけられていてわかるように、とにかくモテる。
くっきりした二重にタレ目がちな瞳はまさに優しさを表していた。
さらにスッと通った鼻筋に薄い唇、そんな先輩は誰もが認めるイケメンである。
きっと一年の多くが先輩のかっこよさに惚れていることだろう。
私も先輩のことをかっこいいとは思うけれど、それ以上に“綺麗だ”と思った。



