「もうこのあたりは大丈夫だよ。反対方向を歩けば夜の街が広がってるけど、こっち側は家が並んである普通の街だから」

「確かに雰囲気が全然違いますね…」


逆に静かすぎて怖い。

駅前がキラキラと店の光などで眩しかった分、この辺りは街灯だけが頼りで、温度差が激しかった。


「俺は慣れたから何も思わないけど、やっぱり初めてだと戸惑うよね」


この道をひとりで通れと言われたら怖くて無理だけれど、今は大丈夫。

繋がれた手が安心感を与えてくれた。


「光原先輩がいるんで大丈夫です…」
「あっ、またそんな言い方する」

少し怒ったような口調で返されたけれど、事実なのだから仕方がない。

結局家に着くまで光原先輩と手を離すことはなかった。