「華蓮ちゃん」
「どうしたの?」

「光原先輩、大丈夫だった?」


それはまるで、私を心配するような言い方だった。


「うん、大丈夫だったよ」
「そっか…」

真由は一度口を閉じたけれど、またスーパーボールすくいの位置につくなり口を開いた。


「あのね、華蓮ちゃん…実は私ね、見ちゃったの」
「見ちゃった?」

「明らかに年上の女の人が、光原先輩に泣きついてるところ…」


少し言いにくそうにしながらも、ゆっくりと話す真由。


「女の人は『遊びだったの?』とか『捨てないで』って叫んでたけど…その時の先輩は一切笑ってなくて無表情で。

氷のような冷たい無表情がとても怖かったんだ…それで、結局女の人を放って行っちゃって」


多分光原先輩も心当たりがあると言っていたから事実なのだろうけれど。

彼の冷たい無表情など想像できない。