ゆららと今までのように接することがなくなって二ヶ月が過ぎようとしていた。

森山とゆららが、付き合っているんじゃないか、とか
森山とゆららが昼休み2人きりで美術室で、過ごしているとか

そんな噂は僕のところには届いていた。

距離を置こうと言われて
それが、別れになるとは思っていなかった。

というか、
ゆららと離れたつもり、はなかった。

それは、僕だけ思っていたことなのか。


昼休み、廊下を歩く森山を呼び止めた。
どこに行くのか?と聞いたら
美術室だと、答えた。

森山は、
モタモタしていたら森本さんをもらうよ、と言った。
そして、
俺は自分の気持ちを伝えた。告白したからと。



2人でいるところを何度も見た。
美術室で、廊下で、帰り道で。

本当なら隣は僕の場所だった。
ゆららは、森山に笑顔を、
僕に向けていた笑顔を向けていた、、。


いますぐにでも、その場からゆららを連れ去りたい

ゆららの手を取って、奪い返せたらどんなにいいか。


距離を置こうと言われた僕にはそんな資格はない。
待つしかないと思った。
ゆららの気持ちを待つしかないと。


必死で自分の衝動を抑えていたけれど、偶然、美術室で2人で向かい合って、森山がゆららを抱きしめる場面を見て、限界だと思った。

もう・・すでに僕は限界だった。


あの日。
ゆららと話をしようと思って
部室へ向かった。
その途中でまさか、ゆららからと会えるなんて思わなかった。

ゆららに大学のことを言わなかったのは
ゆららのためを思ってじゃない。
僕のため・・だった。

僕が不安で
ゆららと離れたくなくて・・
だから、推薦なんて断ることに、ためらないはなかった。

だれに何を言われても
ゆららのそばにいると決めた。

陸上をしなくてはならないのなら
どこの大学でもできる。

中学の時、進学する高校を決めたように。


ゆららに伝えるのはどうしたらいいか悩んだ。
このまま知らないままでいられるならそれでもいいと、おもった。
あえてゆららには言わなかった。

第三者からゆららに伝わるなんて思わなかった僕の詰めの甘さもあって、ゆららを追い詰めたなんて予想外だったけど。

ゆららも僕をみていると辛そうだったから、なるべく授業以外は図書室とか、隣のクラスの友達に会いにいったりしていた。

森山も、僕に気をつかっているのか、距離を置くようになって話をすることも
少なくなった。





いつもと様子が違う僕に、ゆららの友達である川上さんから、
ゆららが、絵画コンクールに出品すると聞いたのはもうすぐ秋になろうかという10月半ばだった。



ゆららはコンクールの追い込みが近かったのか
休み時間も部室にいたから余計接点がなかった。

ましてや森山が一緒にいる・・となると
気が気ではなかった。


自分が一番不安なだけ。
離れることや距離があること・・
距離に負けてしまうと思っている自分がいること・・

本当・・どうしようもない。


やっと手に入った。
大事な人なのに、
自分を本当に必要としてくれているのか
自分と同じくらい好きでいてくれるのか
いつも不安で仕方ない。

いつからこんな弱い人間になったのか・・。

ゆららのことになると
自分が自分でいられなくなる。

冷静になれない。

二年半も一緒にいるのに・・まだ不安でしかない。

自分のものだと
ゆららに近づこうとする男たちを所有権を見せつけてきた。

まわりからみたら
僕は滑稽に見えるだろう。


みんなが言うようなできるやつでも、
落ち着いてもいない。

情けないくらいみっともない男だ。

ゆららの気持ちを疑っているわけではない。

それでもまだ不安なのは・・
なぜなのだろう。