私恋愛離脱宣言

専門学校の一日は忙しい。

毎日実習があり、朝はお菓子を作って試食して、午後は座学もある。

「ね、ねむい…」

一人暮らしになれてはきたが、洗濯物や洗い物を考慮して早起きすることだけが未だに体に馴染まない。

お昼ご飯のいいにおいが充満するラウンジで、机に突っ伏しながら体から生気が抜け出る感覚を覚えた。


「園田、ちょっと来て。」

「何？」

突然私を呼び出したのは新田くんだった。
席に呼びつけられて携帯の画面を指さされる。

「この靴、どっちの色の方がいいと思う？」

見せられたのは有名なブランドの革靴だった。

「んー、新田くんなら黒だね。」

「おー、やっぱり？」

そんな他愛もない会話をして、成り行きでその場に居座っていた。

次第に好きなブランドの話や、いかに自分が安い服でコーディネートしているか、などの話で盛り上がった。

新田くんは普段は表情を豊かにしない人だと思っていた。しかしその時は、好きなものをたくさん話す、まるで少しわがままな子供のように表情をくるくると変えた。

なぜ今、私が話しかけられたのかはわからないけど、少しでも新田くんが私と仲良くしようとしてくれてるなら嬉しい。

いつのまにか午前の疲れは忘れて、昼休み中ずっと彼と話していた。