「音!!送るよ」
最寄駅が同じなこともあり、私は悟と一緒に帰ることになった。
「楽しかった〜!俄然京都行きたくなくなったよぉ」
「こらこら、夢のためだろ。」
「まあね」
「また、京都に遊びに行ったときは泊めろよ?」
「絶対きてよ!?みんなで!野球しよ!」
「あり!!」
いつもの野球部のノリで、すっごい盛り上がってた。懐かしい一年の頃の話。初めて出会った時はみんな素っ気なくて、1人女子がとても心細かった。でもいつの間にか、みんなは私の大切な家族だった。
「超さみしい。帰りたくないなぁ」
無意識溢れた本音だった。
「遠回りして帰る?」
最寄りの駅に着き、お互い帰路につこうとした時、当たり前のように家まで送ろうかと言って、自転車の後ろに乗せてくれた悟。
私は龍のことなんかすっかり忘れて当たり前のように悟の背中で楽しげに歌っていた。
夜も遅くだというのに、悟はわざわざ少し遠回りをして送ってくれた。
その間も途切れることなく話す。
家の近くになって、急に現実を感じた。
「2日後には私ここにいないんだあ」
「お前の帰って来る場所はここだよ。」
「っ…。悟ぅ。ありがとう」
不意に泣きそうになった。最後の曲がり角を曲がった時、見えてきた家の前には人影があった。

