涙を堪える楓を抱きしめてやりたかった。

離したくないと、そばにいろと言いたかった。



最初で最後だから。

呼んで欲しい。

「最後に一度だけ、名前を呼んでくれないか?」


「蒼士さん、、、」


身体に心に染み込ませよう。

深く強く、忘れることのないように。


最初は駒でしかなかった。

それはすぐに別の対象へと変貌した。

一緒に過ごした時間はわずかだったが、今までに感じたことのない幸福感で満たされたんだ。

素直になれない不器用さが、後悔の念に苛まれることになるとは。

あのときは微塵も思わなかった。


一生、この後悔を背負っていくのか、、、

たまんないな。

根腐れしてしまう。




そんなのは俺じゃない。

らしくもない。