沢山、沢山焼き付けよう。

声も顔も、最後に触れた温もりも、、、社長の全部。

私の記憶の中に取り込もう。



螺旋状の非常階段を下まで降りると、帰ったはずの寺川さんがいた。



「あの、どうして、、、」

「泣きたいかと思いまして、歩くのははばかれるでしょうから。」


今はこの優しさに甘えていたい。


寺川さんの車に乗って、思う存分泣きじゃくった。

我を忘れて、思いの丈を流れる涙に込める。


本当に、本当に終わったんだ。

プライベートで過ごした時間は、ほんの一握りだったけど、人と人が向き合い、馴れ合うには十分な時間だったと思う。



社長との事は私のかけがえのない財産になる。

好きになったこと、きっとずっと忘れない。