何度も名前を呼んでくれたのが、別れのときだなんて、、、


苦しい。


息の仕方を忘れるほど、社長からのサヨナラは残酷だった。



「社長、どうかお幸せに。サヨナラ、、、」


踵を返して背を向ける。

涙を必死に堪えて、唇をギュッと噛み締めた。


「最後に一度だけ、名前で呼んでくれないか?」

背中越しでも、社長の声は震えてるのが分かる。

もしかして、社長も?


最初で最後。


私は振り返って、笑顔で口を開いた。


「、、、蒼士さん。」



「もっと早くにお前の気持ちを知りたかった。それだけが悔やまれるな。今さらだが。」

「それは、、、たぶん、お互い様、ですね。」

「そうだな、俺もか。」

「はい。それでは、、、」

「あぁ。元気でな。」

「しゃ、、、蒼士さんも。」


ぎこちなく微笑むと、鍵をあけて帰宅を促す。