すると社長が、ポツリと消え入る位の声で呟いた。


「楓、、、」


私はその瞬間、咄嗟に抱きついてしまった。

でも、、、離れたくない。

今だけ、せめてこの一瞬だけ、、、温もりを感じたい。


「、、、社長、私、、、社長が、」

「言わないでくれ。俺はもうすぐ結婚するんだ。」

「分かっます。でも、ケジメをつけたい。新しい一歩を踏み出したいんです。」

「それはお前のエゴだろ。後戻りは出来ないんだ。聞いてしまったら、俺は自分を止められない」

「、、、社長、それはどういう意味ですか?」

「楓、もう、会うことはない。」


身体を引き剥がされて、残った余韻に切なくなる。

このあとに言われる言葉を予測して、、、




「楓、サヨナラだ。」



分かってた。


分かってる。

だけど、面と向かって口にされると、どうしようもない。