結局、会社まで送ってもらった。

寺川さんが言ったことの詳細を知るために。

部外者だから、裏口からこっそりと。

非常階段を、15階分上がるのはしんどいけど、仕方ない。


「ありがとうございました。ハンカチ、洗って返します。」

「いえ。私が必要なときは、連絡して下さい。」


寺川さんの車を見送ってから会社へ入った。

社長室に着くまで、走馬灯のように短期間の出来事を思い出す。


会うのも話すのも、きっとこれが最後だから。

二度と後悔の渦に巻き込まれないためにも、現実と向き合おう。



深呼吸を何度もして、社長室をノックした。


「はい。」

「あの、佐野です。すみません、突然、、、」

乱暴な位、豪快に開かれたドアの前には驚いた顔の社長。


元気そうな社長に、言葉よりも先に涙が零れた。