違う。

敢えて言ったんだ。

彼は私のものだって、分からせるために。


でも、だからって、、、


あんなの見せつけられて、牽制されて、これ以上私の出る幕なんかない。


あの人、、、"蒼士"って呼んでた。

呼び捨てで、愛しそうに触れながら、、、


私が呼べない。呼んだことも、呼ぶこともない、名前を、、、


行かなきゃ良かった。

こんな惨めな思いするなら、断れば良かった。

遠くから黙って祈ってれば、、、


私なんかが出過ぎた真似をしたから。


でも、もう行かない。

社長には、大切な婚約者がいる。

私が行ったところで、何もしてあげられることはないから。



寺川さんの電話にも出ることを止めた。



それから、間もなく、社長の意識が戻ったと、留守電を聞いた。