秘書室に戻り、大きな段ボールを見た寺川さんが怪訝な顔をした。

「佐野さん、それは?」

「あ、結婚式の招待状です。社長の。」

「え?どういうこと?」

「へ?どういうこととは、、、どういうことですか?」


我ながらなんて陳腐な返答だろうと思った。


「何も聞いてないから。ちょっと社長室へ行ってきますね。佐野さん、それまだ出さないでくださいね。」


「あ、はい。わかりました。」


珍しく慌てた、といってもポーカーフェイスな寺川さんの現状はほぼ崩れないけど、ほんのちょっぴり口調が緩んだから。

だから慌てたんだと勝手に解釈した。


寺川さんに話してないなんて、忘れたって言い訳は嘘臭いし、わざと言わなかったんだろう。

その真意は図れないけど。