小森さんは手からグラスを奪い取ると、ぐっと距離を縮めて囁いた。

「僕はいつでもそばにいますからね」

ゾクゾクと血の気が引いていく。

まさか、、、?

問いただそうと気を引き締め直したとき、社長の声が聞こえた。

「いつまで何をしてる」

「あっ、すみません。」

「ん?君はたしか、門田社長の。」

「はい、秘書の小森と申します。」

「で、うちの秘書になにか?」

「いえ、世間話をしていただけですよ。では、私はこれで失礼します」


小森さんが去り際、私の手にメモを握らせた。

社長に気付かれないように、そっとバッグへ忍ばせる。


「本当はなに話してたんだ、あいつと」

「え?あ、いえ、世間話です。仕事の話は一切出てませんので、安心してください。」

「はあ、、、まあ、いい。そろそろ社長就任の挨拶があるから、それが終わったら帰ろう」

「わかりました。」