いつか、他の誰かとこんなふうに同じ時を過ごすのかぁ。


「ごちそうさまでした。私、洗い物しますね。」

「いいよ。俺がやるから、お前は出かける準備をしろ」

「出かける?」

「しばらくはこのマンションで暮らすんだ。身の回りのもの、持って来なきゃないだろ?また尾行されたりも心配で、新しく買うことも考えたが、使いなれたものの方がいいかと思ってな。」


「そうでした。忘れてました。お気遣いありがとうございます。」

この人はどれだけモテてきたのだろうか。

表の顔とこの優しさで、おそらく引く手もあまただったに相違ない。

細やかな気遣いが出来る男なんて、そうそうどこにでもいるわけじゃない。


現に私はそんな男とは過去に出会えていないのだから。


「大丈夫だ。ちゃんと俺もついていく。」

「えっ、、、」

「なんだよ。不服なのか。」

「あんまり優しいから、何か企んでるんじゃないかと思って」