秘書室の面々へ流れるように挨拶をして、なぜか社長室へ通された。


久しぶりに踏み入れる社長室は相も変わらず無駄に広くて、懐かしさに笑みがこぼれる。



「さて、佐野さん、何から話しましょうか?」


「山ほどありますけど、寺川さんは全て知った上で行動してたということですか?」


「ええ。そうですね。騙すようなことをして申し訳ないと思ってます。」


「、、、それは、その、引き留めたときの言葉も含めてですか?」



一瞬だけ強張らせた表情を、私は見逃さなかった。

だけど、すぐにいつもの表情へと戻ってしまう。



「、、、どうにか留める手立てをと。そのせいであなたを困らせてしまいましたが。」


「そう、ですか、、、」


チクリと痛む心は気付かないでおこう。