どうしたものかと目を合わせられないでいると、少し砕けた物言いに驚く。


「こうなるまで気付かないなんて、、、してやられた気分だ」


「あの、寺川さん?」


「やっぱり無理だった?」


「え?」


やれやれと言いたげに小さくため息をつくと、ジャケットを脱いでリビングの椅子に掛けた。


ネクタイに手をかけながら近づく仕草は、恋人同士ならこの後の情事が想像出来る。


けど、私たちは違う。

この行動の先なんて読めるはずもない。

微動だにせずに立ち尽くすしかなくて。


目の前まで詰められた距離にドッと心臓が跳ね上がる。