震える手を爪が食い込む程に握りしめた。


やるせない、当たり散らせない怒りをどこへ沈めればいいのか


手離したことを夜毎後悔して、尚、こんな仕打ちとはな。


「、、、下がっていいぞ」

「はい。では失礼します」


寺川が悪いんじゃない。

恨むんじゃない。

冷静になるんだ。


そうだ。

俺は俺自身と、楓の意思を尊重した。

涙ながらに去る後ろ姿を、引き止めて抱きしめることをしなかったのは紛れもなく俺だ。


いつか会うことがあれば、、、

アイツは良い奴だと言ってやろう。