口元が微かに揺れると、寺川さんは静かに問い掛けた。

「それはまたずいぶんと慣れてくれたんですね。居心地いいですか?」

ん?

なぜそういうことになる?

「ぼんやりしながら本音がこぼれるということは、それだけリラックス出来てると解釈しますが?」


理解しかねて無言になった私に言葉を重ねる。


あー、なるほど。

言われてみればそうなのかもしれない。


「だとしたら寺川さんのおかげです」

「、と言いますと?」

「私が気を遣わないように、居づらくならないようにしてくれてるから」

「楓さんは素直な方ですね」

「え?」

「それがすべて策略だとしたらどうします?」

思いがけない一言に背筋がゾクリと音を立てた。

ほんの一瞬、寺川さんの目の奥がギラついたようにも見えて、反射的に俯く。