はやる気持ちをグッと堪えて、赤提灯へまっしぐら。

ガラガラっと、立て付けの悪い古い扉を開ける。

「いらっしゃい。お、楓ちゃん久しぶりだねぇー。」

「おやじさん、相変わらず元気そうで」

「それが取り柄だ。さあ、座んな」

「はーい」

「楓ちゃん、お疲れー」

「あ、真下さん。来てたんですね、お疲れ様」

「週一は決まりだからね」

常連の一人、他社の営業マン真下さんとはここに来たら飲む程度の仲間。

こういう常連同士の付き合いが沢山いる。

「おやっさん、楓ちゃんに焼き鳥適当にご馳走してやってー」

「本当ですかー?わーい、嬉しい」

「じゃあ、乾杯」

ジョッキをぐいっと傾けて、ビールを半分ほど一気に流し込む。

はあー。やっぱり美味しい。

身なりなんて気にしない。

臭いも全然気にならない。

これが私の最高の時間の過ごし方。

満足、満足。