もう、お兄ちゃんと呼んで貰えないかもしれない。

側にいて欲しくないと、言われるかもしれない。

それでも今は。

大切に思っている人がいると、分かって欲しい。

何故ならこれから………

もう一つ残酷な話を、しないといけないのだから…………。




「それからもう一つ。
伝えないと………いけない事がある。
璃子のお腹には………………子供がいる。」

ヒッ!と……………空気を吸う彼女。

涙を覚悟したが…………

そこで止まってしまった。

……………やっぱり

俺の前だと…………もう、泣けないかぁ。

覚悟していたことだけど……………辛いなぁ。

黙り込んでしまった夏苗ちゃん。

「俺が居たら、泣けないかぁ。
…………ごめんね。
多岐さんに言って、部屋を用意してもらうね。
ちょっと待ってて。」

立ち上がる俺に

「あの………春人さん。
……………………………お兄ちゃん。
私を傷つけないよう……………考えてくれて…………ありがとう。」

こんな時まで、優等生の夏苗ちゃんかぁ。

「……………もう、いいよ。」

諦めた声を、出す俺に。

「良くない!
いいから、聞いて!!
誠ちゃんのこと…………直ぐに全て受け止めるのは
ちょっと大変だけど…。
たぶん、時間が立てば………大丈夫な気がするの。
だって!
優しいお兄ちゃんが、ずっと側にいて支えてくれるんだもんね。
さっき泣かなかったのは………別に無理してじゃないよ。
悲しいよりも…………
子供扱いされて、悔しかっただけだから。
キチンと話してくれたら………
『時間はかかっても、受け止められるのに!』って思ったの。」