「ヨゥ!」

ポンと肩を叩くと

人懐こい笑顔を張りつけた男が振り返る。

彼とは、年は離れているものの……

同じような環境で育ったせいかウマが合う。

次期会社社長と噂の流れる彼だが

流れに従うでもなく………

かといって

反発して全てを否定するものでもない彼のやり方に

好感を持ち、尊敬している。

まぁ、要は…………

頭が良く、ズル賢いだけなのだが。

人畜無害なその表情からは、想像も出来ない

男なのだ。




「春人、いよいよ跡を継ぐらしいな!」

今一番嫌な話題を持ち出して、ニヤリと笑う。

「ちょっと!」

焦る俺を面白がり

「今のうちに良い子を物色しとけよ。
どうせ、自由な恋愛は無理なんだから。
あの子なんてどうだ?」と。

何気なく指を差した方に目を向けると…………。

あの頃より幾分大人になった

夏苗ちゃんの姿があった。

彼は、オヤッ!っという目をさせて

ポンと肩を叩くと

「これはこれは………」と話し掛けていく。

えっ!?

ちょっと!!

焦る俺をグイグイ引っ張り…………

彼女のもとに運んで行ってしまった。