「家族と過ごすって…………良いねぇ~」

俺の隣に座って

日課になったセリフを吐く。

お金もあり、したいことも出来ただろうけど…………

愛情や心は、満たされてこなかったみたいだ。

「学生の頃は、勉強が忙しかったから。
淋しいなんて思わなかったけど。
幸せを知ると、淋しかった事を感じるね。」

幼稚園の先生になることを希望して

勉強している彼女にとって。

一般家庭の生活を経験するのは、とても大切だった。

だって、教える筈の先生が

着替えを手伝ってもらってては、子供たちに笑われる。

これから2年をかけて

じっくり覚えていかないとな。

「先生、赤ちゃんみたい!」とからかわれないように

特訓だな。

「そう言えば、はぁちゃん。
私が政略結婚されそうになった相手って………知ってる?」

「たかの、弟だろう?」

「そうそう!
敵情視察をするために、お店に飲みに行ったら
結構なおじさんで、びっくりした。
はぁちゃんと『一回り離れてる』っていうと
友達に『スゴい年の差』って驚かれるのに
…………それ以上だよ!!
こんなに若くて可愛い女の子の相手に、そんなおじさんって…………
失礼だよねぇ!」

自分がその年の離れた彼氏相手に

『おじさん』だと言ってることに…………

気づいてないんだろうなぁ~

苦笑いを浮かべると。

「でね!
夕方からは、その人の弟って人がお店を交代するんだけど。
その弟が、ムチャクチャカッコイイの!!
ちょっと哀愁を感じられて………。
はぁちゃんと、変わらない年の差らしいんだけどね。
ゼミのみんなに話したら
『見に行こう!』ってことになって………。
ごめんね!
今日、帰りが少しだけ遅くなる。
ご飯は、先に食べててね!」