4月12日、渋谷警察署、山村刑事たちは捜査を進め、ナンバーは分からなかったが撮影された写真、防犯カメラ、目撃者の証言からバイク販売店の購入者リストも調べバイクの所有者が日向秀樹20歳私立大生と判明した。佐藤刑事「日向は普通免許しか持ってないな、写真を見る限り、体格もちょっと違う」山村刑事「呼び出して事情聴取しよう!」14日朝、日向は任意同行を求められた。母親「あんた警察って、なにしたの?」母親「まさか、逮捕されるとかじゃないよね?」佐藤刑事は両親に現時点では被疑者ではなく捜査協力が目的であると話した。
日向はソワソワしていた。山村刑事「大丈夫か?」日向「オレ、逮捕されるんですか?佐藤刑事「しないよ!逮捕状とってないし!」日向「ホント!手錠、ブタ箱、マジで怖い。いつ出られるかも分からないし」佐藤刑事「大丈夫、運転してた人物は写真でも防犯カメラ映像、その他の証拠から日向くんとは体格、身長全然違うから」山村刑事「君がバイクを貸した相手は誰か聞きたいのだよ?」日向「よかった!」山村刑事「すっかりビビってるな」山村たちは日向から事情を聞き、バイクを瀧に貸していたことを日向は正直に話した。山村刑事「森崎瀧、17歳都立新宿西高校3年生か」佐藤刑事「体格も酷似してるな」日向は聴取を終えて帰宅した。日向「瀧、これでお前は年少行きだな!」日向「瀧のこと邪魔だし、瀧のせいでオレは永井にフラれた」日向「都心生まれをなめるなよ、田舎もんが調子に乗るからだ」翌日以降、瀧に対する捜査は確実に進んでいった。
山村刑事「それにしても免停明けてすぐこんな暴走行為に及ぶとは、なめてんな」佐藤刑事「確かに、赤切符もらって家裁送致されてんだから運転は控えるのが普通だ、ここは東京都心、運転しなくても不便はしないだろ、それに高校生の身分で余計にたちが悪いな、在宅を視野に入れる必要あるのか疑問だ」 一方で、瀧は刑事たちが自分の行動パターンを調べていることをうすうす気づいていた。瀧「どうしよう?ヤバイかも、日向先輩はいたんだ、ナンバー跳ねられてたけど持ち主が分かるなんてスゴイ、でもそんなことよりオレ、先輩に嵌められた」瀧「けど悪いのはオレだし、気づかないしパトカーから逃げたし余計に疑われる、どうしよう!刑事さん、オレの行動パターン調べて、オレ逮捕されるかも」亜衣「瀧くん、どうしたの」瀧「なんでもない!」瀧「保護観察ですんでも1ヶ月以上は拘束される」瀧「やってしまったことはしょうがない、父さんに相談しよ」港が帰宅、瀧「父さん!オレ」港「分かってる、外でウロウロしてる不審者、刑事だな」瀧は港に全て話した。港「やってしまったことは罰を受けるしかない、未成年とはいえ大人に限りなく近い」港「けど大丈夫、きちんと守ってやる法的に」瀧「父さん」港「あと逮捕の時、抵抗するとみっともないからおとなしくしておけ」瀧「うん!」港「出所後のことはサポートするから」港「あと、逮捕までは春香には黙っておく!言ったところでうるさいだけでメリットがないから」翌日、オレはバイト先で日向と会話はしていたが、双方事件の話題には触れなかった。
渋谷警察署、佐藤たちは逮捕か任意捜査か決まってなかったが、佐藤刑事「おそらく張り込みはバレてるだろう、なかなか鋭いな」山村刑事「罪を認めれば任意で送致する、木村、一応逮捕状は取っておけ」木村警部「了解、しかし暴走族絡みの共同危険行為で共犯者がいる疑いの強い事件で出頭ぐらいで任意とか、相変わらず優しいな」木村警部「それにしてもこの被疑者、超秀才だな、西高で学年1位の成績、高校のマラソン大会でも5番以内に入っている、確かに任意でいくほうが彼の将来のためにも負担は少ないかもしれん」26日、瀧への逮捕状がおりた。山村「これ以上出頭しなければ身柄をとる、分かっていて罪から逃げようとする魂胆は見過ごせない、若いうちから社会を舐めてもらっては彼の今後に悪い」佐藤刑事「おそらく未成年で親も有名人、俗に言う上級国民だから見逃してくれると思っているんでしょう」翌日、木村警部「勇介、森崎くんにお前がワッパをかけろ、逃げられた悔しさを晴らしてこい」佐藤刑事「はい!」木村警部「あと、被疑者のことだがかなり気の強い性格であり不満があればすぐに反論もするし言葉にも気迫がある、毅然とした対応を行い相手のペースに乗せられないようにせよ」木村警部「明日朝6時半に被疑者宅にて着手する」28日朝6時30分過ぎ、姉貴が出かけていった。母は夜勤明けで1度、大宮の自宅に帰っていた。父は勤務中で不在、4名の捜査員が瀧の自宅を訪問、家宅捜索令状をオレに呈示、罪名は道路交通法の第68条と記載してあった。68条とは共同危険行為等の禁止のこと、2台以上の自動車等で共同して道路上において他の交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼす運転等の行為のことをいう、オレはそれに違反した運転をした疑いがあるということだった。罰則は2年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科され行政処分では25点の加点になり加点ゼロでも原則2年間の免許取り消し処分が科される決して軽くない違反行為だ、オレは令状をくまなくチェックし問題がないか確認した。日下部さんに犯罪の嫌疑をかけられた時は令状の確認をするように教えられてきたからだ、瀧「どうぞ!入って下さい!」家宅捜索令状があっても全ての部屋を捜索できるわけではない、きちんと令状に範囲が記載されている、1人の刑事が父の部屋に入ろうとした、令状では範囲外となっていたオレが注意すると渋々従った。佐藤刑事「あの子鋭いな」山村刑事「佐藤、気をつけろ!面倒な相手だからだ!後で付け込まれるぞ」30分弱で捜索を終えて、オレは着替えを済ませ刑事の指示に従い荷物を持つ、この時点で逮捕されるのは予想できていた。自分のしたことには責任を持つように父に言われてきたから覚悟してきたけど怖かった。
警察車両に乗せられた。オレの両隣りに刑事が座った、瀧「別にオレ逃げないですけど」と不満を漏らした。佐藤刑事「いやぁ!軽い罪でも逃げようとする人いるんだよね」と優しく言われた。そこで逮捕状が出ていることを告げられたが刑事はここでは執行しないと告げた。オレは逮捕という言葉にドキドキしながらも強がって、瀧「なんだよ!ここで手錠掛けてくれればいいのに」とオレは虚勢を張った、佐藤刑事「逮捕状はとったけど、執行するかまだ決めてない」普通の人ならそう言われればもしかして逮捕されずに帰れると期待してしまうと思うがオレの考えでは任意同行でゴネられないようにする作戦だったのかと思ったが少年事件は特に殺人などの重罪でなければ原則任意捜査と犯罪捜査規範208条で決められていたので淡い期待を抱いていた。渋谷警察署に到着、取り調べ室へ連れてかれた。今まで真面目で成績優秀なオレがまさか被疑者として取り調べを受け逮捕されるかもしれないなんて予想外だった。刑事2人が相手だが、取調室のドアは開いていて通行人に見えるようになっていたため安心感があった。1時間程の取り調べでオレは運転していないと答えた。ウソだけど認めたら逮捕されてしまうと思ったら怖かったからだ、共同危険行為の場合は共犯者の関係上、自供しても否認しても勾留されてしまうからと考えての決断だった。しかし刑事も一歩たりとも引かない、この時オレはいつ逮捕されてもおかしくない緊張感の中にいた、そして、山村刑事「逮捕状執行しよう」刑事同士が耳打ちしていた。すると突然佐藤刑事が手錠と腰縄を取り出した。手錠は黒だった、オレは唖然として思わず、瀧「はぁ!ちょっと待ってよ!」と叫んだ。佐藤刑事「自分のした犯罪を反省して、償いなさい」と咎めら佐藤刑事はオレの左手を掴んで手首に手錠を当てていた、手錠の冷んやりした感触が伝わってきた。瀧「このままでは両手を拘束されてしまう!オレどうしよう?」山村刑事はオレに逮捕状を示しながら逮捕状を丁寧に読み上げていた、山村刑事「森崎くん、えっとこの時間、午前9時19分に道交法違反で通常逮捕するからね!」瀧「逮捕状きちんと見せて、見せてくれたら両手差し出すから」オレは逮捕状をきちんと見せるように要求した。オレは逮捕状を確認していた。瀧「あ!オレの名前の字が違う」瀧ではなく龍になっていた。瀧「これどうなっているの」と字が違うことを強い口調で指摘した。
佐藤刑事が思わず怯んでいた。俺はさらに追及した。瀧「あの、刑事さんがどうして被疑者に圧されてるの」山村刑事たちは慌てていた。逮捕の執行は一時中断していた。その時、バイト先の先輩、清水からの電話だった、オレが電話に出ると、山村刑事「何を勝手に電話に出て」瀧「逮捕状の執行が出来てないのだから、オレの自由は保証あるんだよ、あなたたちのミスだよ」と非難すると山村刑事は黙り込んだ、永井さんが何者かに誘拐されたという内容だった、オレは走って自宅までバイクを取りに行く、おまわりは追って来なかった。木村警部「すまない、オレのミスだ!」山村刑事「しょうがない!挽回しよう!一応カレの尾行をしよう!」木村警部「こっちは逮捕状の訂正手続きをしてくる」佐藤刑事「あの少年、逃げたという感じじゃなかった!なんかのトラブルか、最近地検公安部が動いているというウワサも聞く」自宅でバイクに乗り、大田区のとある建物に向かっていると、今井「おい!森崎なにシケタ顔してんだよ」瀧「文夫さん!」瀧「永井さんが拉致られて、場所は羽田エアポート近くの倉庫」瀧「来てくれるか?」今井「当然だろ!スカしてんなよ」2人が倉庫に乗り込むと男2人が逃走した。永井を救出、永井「瀧くん来てくれた」瀧「大丈夫か!」そこに警察も乗り込んできて男2人を確保、瀧「撤収するぞ!」しばらくして山村刑事も到着、山村刑事「追うな!住所は分かっている!」帰り道、瀧「おまわり、追ってこない」夜はオレの自宅で食事、10時前に2人は帰っていった、姉貴が寝静まった後、父にオレは自分あてに逮捕状が出ていたコトを話した。港「そうか!お前も来月で18なんだし!自分のしたことのケジメはつけないとな、例え発達障害だろうと悪いことをすれば未成年だろうと処罰を受けなければならない」瀧「刑事が黒い手錠に縄出してきた時、マジ焦った」港「焦るなよ!ワッパ掛けられても別に痛いわけじゃない!怖がるなよ」瀧「別に怖くはないけど、両手拘束されて縄で繋がれたら屈辱やん!」港「だろうな!しかしそれも自業自得じゃないか?悪いことをしたからそうなったってな」港「心配するな!弁護士立ててやるから、まぁどっちみちお前は未成年だから家庭裁判所の少年審判を受けるからその時は親も出なければいけない、まぁ有給休暇使うことになるな」瀧「父さん、ごめん迷惑かけちゃって」港「気にするな!んなコト」瀧「父さん!聞きたいんだけど、オレって少年鑑別所入るのかな?もしかして?」港「警視庁所轄の対応次第かな!逮捕されなければ在宅で家裁に行くから、余程再犯とかなければ鑑別所はほぼ行かないが、逮捕となれば、逮捕から勾留されそのまま家裁送致となれば、観護措置決定を家裁はほぼ100パーセント出すからそのまま鑑別所送りになるな!」瀧「ちょっとオレ、逮捕状出てたし!まさかオレ鑑別行き?」港「怖がるなよ!悪いことしたんだからしょうがない自分なりに責任取ってこい!」オレは覚悟を決めるしかないと思った。1度出た逮捕状を警察が撤回する可能性は低いだろうから、瀧「同じ暴走行為でも全員逮捕じゃなくて書類送検も多いやん!なんでオレの場合逮捕状まで出してくる!」港「基本的にリーダークラスと中堅と常習犯は原則逮捕と聞いたことあるが!瀧は末端以前に、勝手に合流して暴走しただけだしな!不思議だな」瀧「そうだよ!オレ自分が逮捕されることに納得できないし!」瀧「だからオレ、両手前に出さない意地張ろうかな!」港「無理やり手錠かけられるけどな」港「警察内部で逮捕基準がある程度あるから、その条件を満たしていれば逮捕ということになる!」オレは息子の逮捕が明日かもしれないとふと思った。警察はいつオレを逮捕しに来るのか気になりながらも床についた。翌日早朝、オレはいつもより早起きして食事も取らず刑事を尻目に急いでクルマで近くのコンビニで弁当を買い食べていた。通常逮捕の場合は逮捕状の執行は車内か署内で行われるが、それは容疑者が大人しく任意同行に応じた場合だけだ、拒否すれば当然、その場での緊急執行が行われることになる、オレは息子が手錠かけられる場面を見たく無かったのだ、家裁の審判では両親が法廷に入る前に手錠等は外されるから見ることはない、服部刑事「先ほど被疑者の父が早目に自宅を出ました!母は夜勤で不在です、被疑者の姉がいるだけです」山村刑事「そうか!好条件だな!20分後に着手する」