永遠は少し考えてから柚葉からノートとペンを預かった。

『俺の声はカエルよりはましだけど、バイオリンよりはかすれて低い声』
永遠が書く文字を柚葉は真剣に見ていた。
そんな柚葉に永遠は微笑む。
『よくわからない』
柚葉は涙を流しながらも少し怒った顔をする。

『赤ちゃんの心臓の音はこの世の何よりも愛おしくてかわいい音。いつまでも聞いていたくなる音』
永遠が柚葉に伝えると柚葉は微笑んだ。
『でも、愛おしすぎて大人よりも早い鼓動に心配になる。俺、医者なのにな。』
永遠の書ききった文字に柚葉に笑顔が戻った。
『柚葉が聞きたい音は俺が言葉にする。柚葉の分も俺が耳を澄ませて聞く。忘れないようにこうして柚葉に伝える。それじゃダメか?』
永遠が微笑みながら柚葉を見ると柚葉は再び微笑む。
そして永遠からペンを預かり文字を書き始めた。
『ありがとう。』
その言葉に永遠は再び微笑んだ。